朝の学舎
おいしいお米がやってくる場所 [伊那毎日新聞]
伊那市美篶小学校5年生 白鳥篤さん・小川文昭さん・小川有里子さん・小沢尚子さん
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(2007/11/22掲載)
伊那谷は、実りの秋から冬支度の季節を迎えようとしている。田畑での収穫のほかにも、山に入ればきのこなど、さまざまな恵みを感じることができる季節でもある。古くから、こうした恵みに感謝して、収穫祭などがおこなわれ、次の恵みへの祈りを捧げてきた。豊かな大地があるからこその恵みを体感することができる暮らしがあった。
今回の朝の学舎のテーマは「実り」。伊那市美篶小学校5年生が、米を収穫し、味わう体験を追った。
田んぼが育むもの
虫もいっしょに
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伊那市美篶の三峰川沿いに広がる水田地帯は、「川下り米」と呼ばれるおいしいお米の産地として知られている。南アルプスの石灰岩質を多く含んだミネラル豊富な三峰川の水を水田に利用していることが、米をおいしくしている、と昔から言われてきた。
秋になると、一面黄金色に染まる水田地帯。現在では、大型機械による稲刈りが主流となり、最盛期にはあちこちの水田で大型の稲刈り機械が活躍する風景を目にする。今回、稲刈り体験に訪れた美篶小学校5年生の中には、米づくり農家もいるが、自宅では機械での稲刈りで、この日は子どもたち全員が稲刈り鎌を持つのも、自分の手で稲を刈るのもはじめての体験となった。
先生役として、子どもたちの稲刈りに参加したのは、地元美篶で長年米や野菜づくりの農家を営む白鳥篤さん、米づくり農家の小沢尚子さん(辰野町)、無農薬の米作りに取り組む小川文昭さん、有里子さん夫妻(美篶)。
「昔は、一家全員でこうして田んぼへ出て仕事をしたもの。そこで、食料の大切さを身をもって学んできた。こういうことを是非知ってもらいたい」(白鳥さん)。ひと・むしたんぼの会のメンバーとして、田んぼに生きる昆虫の観察を続けている小川さん夫妻、小沢さんは、稲刈り作業の前に子どもたちと一緒に稲穂の間にいる虫たちを探し、「田んぼが育むのは米だけじゃない」ことを、楽しみながら子どもたちに伝えた。
稲と虫に囲まれて
炊きたてのご飯
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この日が全員、はじめての稲刈り体験となった子どもたちは、最初は稲を刈り取る時の力の入れ具合に戸惑ったものの、白鳥さんの見事な仕事ぶりを見て、すぐに「楽しい」「おもしろい」「田んぼ、最高」と刈り進み、予定していたよりも広い面積を刈り終えた。
そして、刈り終えた後は、10株ほどずつにまとめた稲をワラで束ねる作業。片手で稲束を持ち、片手で器用にワラで縛っていく白鳥さんや小川さんの手つきに目を丸くしながら、はじめての稲束づくりに挑戦した。ほとんどの子どもたちが、すぐに稲束がゆるんでしまい、ハザにかける時に持ち上げると、縛ったワラがはずれたり、ゆるんで稲がこぼれたり。何度も何度も白鳥さんたちに教わりながら、ワラの感触を楽しむように作業をしていた。
また、この日は、小沢さんが『糠窯』と呼ばれる、もみがらで米を炊く昔ながらの道具を用意し、この秋小川さんの田んぼで収穫した米をもみがらで炊いて、全員で味わった。さらに、小沢さんが田んぼの土手で採取した野草から作った通称『あぜ茶』も用意。子どもたちは、全て田んぼからいただいた恵みをおいしいそうにほおばり、笑顔を輝かせた。
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