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朝の学舎

『朝の学舎』この一年 対談 武田徹・馬塚丈司 [伊那毎日新聞]

感動の継続がこころを育てる


『朝の学舎』この一年 対談 武田徹・馬塚丈司 [伊那毎日新聞]
サンクチュアリNPO馬塚丈司さん(左)とナビゲーター武田徹
(2008/3/21掲載)

昨年4月にスタートした『朝の学舎』は、未来世代を担う子どもたちへのメッセージとして、天竜川水系を舞台に土や水、森などに深く関わっている皆さんと子どもたちを追いかけてきた。

 天竜川河口の砂浜で産卵するアカウミガメ(絶滅危惧種)の卵にさわり、小ガメの放流を体験(昨年9月放送)、伊那谷に伝わる養蚕文化と技術を伝承する唐澤さん夫妻と西箕輪小学校の子どもたちの触れ合い(昨年10月放送)、一滴の水の中に生きる珪藻との出会い(昨年4月放送)―など、伊那谷の子どもたちが心と体で感じたこの一年。この豊かな自然の恵みの中で、それを感じ続けることができる未来であってほしい、また、次の世代、また次の世代へとつないでいってほしい、という願いを、それぞれの番組の中で、先生役の皆さんに伝えていただいた。

 今回の朝の学舎は、天竜川河口でアカウミガメや砂浜の環境を守る活動を20年以上前から続けているサンクチュアリNPOの馬塚丈司理事長をゲストに迎え、ナビゲーター武田徹とともに、21世紀を生きる子どもたちへのメッセージを改めて語り合う。

天竜川は遠州灘の母親


天竜川は遠州灘の母親
新山小学校の子どもたちが天竜川河口の砂浜でアカウミガメの卵を保護(2007.9放送)

武田 私たちは天竜川上流に住んでいます。天竜川の恵みというとどんなものを思い浮かべますか。

馬塚 天竜川が運んでくれる水がなかったら、私たちは毎日生きていけませんから、やはり水ですね。

武田 上流では、その水が、下流の人たちにどんな影響を与えているか、ということは普段考えずに生活しているような気がします。上流と下流がつながっていることを意識することはとても大切なことですね。アカウミガメも、上流から運んだ砂があるから、そこで産卵ができるということ。

馬塚 そうなんです。私は、遠州灘を作った天竜川というのは、遠州灘の母親だと思っています。もし、天竜川が砂を運んでくれなかったら、砂浜はなかったし、何億年もの歴史を持つアカウミガメも産卵に来なかったでしょう。

武田 そのアカウミガメの保護活動を続ける中で、どんなことがわかってきましたか。

馬塚 最初は、天竜川は水を運んできた、という思いでしかありませんでした。しかし、天竜川は砂を運び、砂浜を作り、そこに古代からの生物の命を育んだわけですよね。ゆりかごのような―。

武田 けれど、そのゆりかごが今壊されつつある…。

馬塚 人工的に造ったものは自然界では異物ですね。それに対して自然が右往左往するので、それによってどんどん自然が破壊されてゆく。人間の行動が、自然の長い歴史を壊してゆく、ということをまざまざと感じます。たとえば川を直してゆくとき、私は河口からやってほしいと思います。川が注ぎ込む海は、全てのものが集まります。天竜川水系の全てのものが結果として出ていますから、天竜川で何がおこっているかは、河口から学ぶべきだと思うんです。河口を見れば、自然が発している警告がたくさんあるわけです。長野県の人は海がない、と言いますが、天竜川を通じて海があるのと同じなんです。

自分のからだでいのちを感じる


自分のからだでいのちを感じる
西箕輪小学校の子どもたちが、養蚕農家を訪ねて蚕の飼育を体験(2007年10月放送)

武田 今回、番組では伊那市新山小学校の子どもたちがアカウミガメの卵にさわり、放流を体験しました。

馬塚 私たちは、心でも感じてもらいたいですが、体で感じてほしいです。いのちというものを体で覚える、と言ったほうがいいのかもしれませんね。ですから、子どもたちに卵を掘ってもらいたい、と思っています。

武田 現在は馬塚さんたちがアカウミガメの卵を保護していますが、それ以前は食べていた人もいたんでしょうか。

馬塚 市場に出回っていましたから、珍味として食べていた人もいますね。ある時、すし屋さんに『ウミガメの卵 時価』と書いてあるのを見たんです。その頃、砂浜をパトロールしていた時、卵を持ち去る人に出会って話を聞くと、「東京に持っていくと高く売れるんだ」と。卵を盗む人と保護する人とで争っても仕方がないので、県や国や市に働きかけて、許可を取ったものだけが保護していい、という仕組みを作りました。

武田 保護する他の理由は。

馬塚 非常に大きなことがあります。カメは夜、孵化するんですが、ある時、遠州灘のカメは、孵化すると蛍光灯の灯りに誘われて陸に向かっていくことがわかったんです。蛍光灯から出る紫外線がカメを引きつけてしまうことがわかったんですね。朝や夕方に孵化したカメは、(その時間帯に)紫外線が強い海に向かいます。それで、孵化小屋で保護して、海に向かう時間(放流する時間)を調整するようにしたんですね。

武田 毎年どのぐらいのアカウミガメが孵化しますか。

馬塚 だいたい2万頭ぐらいでしょうか。2万人から2万5千人ぐらいの人が毎年全国から孵化したカメの放流会に来てくださいます。私は、子どもの頃に忘れられない体験というのはいくつかあると思いますが、このウミガメの放流は、いのちを考えたり、環境を考えたりする時に、とてもインパクトが強い環境教育だと考えています。是非、皆さんにも実際に体験してもらいたいと思います。

武田 あのアカウミウガメの赤ちゃんのように、てのひらにのるような大きさのいのちに触れる機会も、今は少ないような気がしますね。

馬塚 そうですね。遠くで見る、映像で見る、本で見る―だけで終わってしまいがちですから、やはりいのちを感じるというのは、自分の体で感じることが第一ですね。

武田 アカウミガメの赤ちゃんを放流する時、子どもたちはきっと自分の分身のようないのちであることを感じたんじゃないかと思います。

馬塚 そういういのちを見送っているわけですね。

武田 子どもたちの手から離れたカメたちは、潮にのって、太平洋へ向かっていく。ということは、天竜川の水というのは世界とつながっている、と言えます。そういう認識が子どもたちの中にも生まれるような気がしますね。

馬塚 国際人というのは、地元、自分の足元をしっかり見つめながら、視野は世界じゅうを見ることができる、そういうことなんだと思います。そういう子どもであってほしいし、そんなふうに成長してほしいと思っています。

自然とコンタクトがとれる子どもに


自然とコンタクトがとれる子どもに
長谷小学校の子どもたちが炭焼き体験(2007年8月放送)

武田 朝の学舎を通して、天竜川水系を通して、子どもたちにいろんなものを感じてほしい、と思っています。たとえば生態系、というとどんなことを思いますか。

馬塚 ものすごい小さい生き物にもすべての生態系があるし、それが集まった生物の集まりにも生態系があって、地球全体が生態系ですから、ひとつのいのちのかたまりと考えたらどうかと思います。動物や植物だけではなくて、水も生きている、土も生きている。そういうものによって全ての生き物が育まれていますから。どこが無くても困りますね。バランスが必要と思います。

武田 人類が登場する前から、森林も陸地も河川も海も、何もかもうまく共生してきたわけですよね。ところが、人間がいろんなものを利用するようになって、危機的な状況になってしまった場面が出てきた。例えば農薬を使うことによって生き物が住めなくなったり…。

馬塚 例えば水田に農薬を使うようになったのは、ほんの少し前なんです。江戸時代には使っていなかった。森林に行った時に海のことを考えられるか、海に行った時に山のことを考えられるか、といったら難しいことかもしれませんが、つながっていることを意識しなければと思います。

武田 そういうことを、子ども時代から体験の中で知ってほしいと思いますね。

馬塚 私は、実は子どもたちに環境教育をしようとか、体験をしようということを考える時、頭で考えるのではなくて体で覚えさせたいと思います。言葉を変えれば、自然とコンタクトが取れるかどうか、ということを考えてもらいたいと思っています。自然のことを知ったり、いのちの大切さを知ると、自然と会話することができるようになります。身近な自然の中に身を置いていくと、だんだん痛みがわかったり、喜びがわかってきますから、自然とコンタクトが取れる子どもを育てることが大切だと思いますね。自然について学ぶのではなく、自然から学べ―とよく言われます。それを自然の中で実践してもらいたい。山の人は海に来て、海の人は山に行って、それぞれのいのちのつながりをしっかりと見つめてほしい、と思います。

武田 子どもは自然の中に行くと本当に喜びます。そうした子どもの本能を大切にしたいですね。

馬塚 私自身もそうですが、自然と人間とが、バランスが取れていた時代を知っている世代の人間が、それを子どもたちに伝えていくことが大切ですね。


美篶小学校の子どもたちが裸足で田んぼに入り、生き物を観察(2007年7月放送)

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